ジグムント・フロイト『夢判断』(高橋義孝訳:新潮文庫、2005年)
第1章 夢の問題の学問的文献
第2章以降で展開されるフロイトの分析の準備:論点の提示をしている。
A 覚醒状態に対する夢の関係(p19)
「夢は現実の生活から完全に切り離されたもの」なのか、「夢は覚醒生活の続き」なのか
B 夢の材料―夢の中での記憶(p26)
・夢の内容を作りあげる材料は、人がそれまでに体験したものから、何らかの方法で採ってこられたものである、それが夢の中で再生産され思い出される、というのは疑いのない事実。
・夢の中で再現される材料はどのように選択されるのか?:夢の荒唐無稽性、支離滅裂性はどうして起こるのか?(p43)
C 夢の刺激と夢の源泉(p45)
・夢を生じさせる刺激
①外的(客観的)感覚興奮:ベッドから足がはみ出した状態で、断崖に立っている夢を見る。
②内的(主観的)感覚興奮:目を閉じた状態で網膜に浮かぶ色や形、光塵。空腹感(p61)。
③内的(器質的)身体刺激:内臓の疾患や痛みが夢の源泉となる。
④心的刺激源:身体刺激がなくても夢を見ることがある。
D 目が覚めると夢を忘れてしまうのはなぜか(p78)
・夢の像が強烈であるような夢は記憶される、と言えるのか?(p80)
・あるいはなぜ、ある夢は記憶され、ある夢は忘れられてしまうのか?
・そもそも、我々は正確に 夢を覚えているのか?(「『(夢の)全面的忘却は問題にならないが、部分的な忘却が曲者なのである。なぜかというと、ひとが忘れなかったことをあとから話 しはじめるとなると、記憶が供給してくれる支離滅裂な断片を想像によって補足する危険がある』(イェッセン)(p85)」)
E 夢の心理学的な諸特性(p86)
2つの相反する見解:
・夢はわれわれ自身の心の所産である(p86)
・夢の舞台は覚醒時の表象生活の舞台とは別物なのだ。(p87)
「一定の順序で並べられたいくつかの「法廷」から構成されているところの、心という機械」(p88)
「覚醒状態の最大特色はシュライアーマッハ―によれば、思考活動が形象によらずして概念によって行われるという点にある。ところで夢は主として形象によって思考する。(p88)」「夢は概して視覚的形象によって思考するのであるが、いつでも必ずそうだというわけではない。聴覚形象や、また稀には他の感覚形象を使うこともある。」(p89)
夢は心的機能が低下している状態なのか?(p91以降)
F 夢の中における倫理的感情(p115)
覚醒時の道徳的性向がはたして夢の中へ入り込むかどうか、入り込むとすればどの程度までそうなのか(p115)
不道徳な夢や荒唐無稽な夢の中に出てきてわれわれを訝らせるような全表象材料を総括して「欲せられざる表象」と呼ぼう。」「欲せられることのなかった表象の夢における出現はいかなる意義を持つのか。」「欲せられざる表象を、昼のうちは抑えつけられていた表象と呼んでよかろう」(p126-7)
G 夢理論と夢の機能(p130)
①覚醒時の完全な心的活動は夢の中でも継続されるという説(p131):夢を妄想症(パラノイア)のごとく構成する(p133)
②夢では心的活動が低下し、諸関連が弛緩し、しかるべき材料が貧弱になるとする説(p132):夢を精神薄弱あるいはAmentia譫妄(せんもう)のごとく構成する(p133)
③特殊な心の仕事への能力と傾きとが夢みる心にはあるとする諸理論(p143)
H 夢と精神病の諸関係(p153)
・ある夢がある精神医学的状態を代表したり、その糸口となったり、あるいはそういう精神医学的状態の経過したのちに残っていたりするような場合の、病因学的および治療学的関係。
・夢の営みが精神病の場合にこうむるところの諸変化。
・夢と精神病の間に存する内的諸関係、本質的近親性を物語る類比関係。