中江兆民『三酔人経綸問答』(岩波文庫版、桑原武夫・島田虎次訳)

伊藤博文『憲法義解』(岩波文庫版)

 

時代背景

民撰議院設立建白書提出 1874年

国会期成同盟結成 1880年

『三酔人経綸問答』1887年刊

大日本帝国憲法公布 1889年

『憲法義解』1889年刊

大日本国憲法施行・帝国議会開設 1890年

・この時代には自由民権運動の高まりに伴い、多数の「私擬憲法」が制作される。

五日市憲法(1881年?)

交詢社憲法(1881年)

東洋大日本国国憲按(1881年、人民主権・革命権を認める)

 

今回読む二作は、そうした時代にあって民権派と政府側双方の論理を提供していると見られる。

 

①中江兆民『三酔人経綸問答』

中江兆民(1847~1901年):アメリカ、フランス滞在を経て、日本に民権思想を伝える。ルソー『社会契約論』を部分訳。

本作では南海先生、紳士君、豪傑君の議論を通して相対する思想を比較検討する。

 

・南海先生は現実世界の地理をご存じない

・民主主義者と侵略主義者の南海先生訪問

2人の人物が訪ねてくる。独りは民主主義者、もう一人は膨脹論者。民主主義者が積極的に民主主義を体現し、もって西洋諸国に範を示すべきではないか。

・国防はヤボの骨頂

さらに民主主義者は軍備による防衛を批判し、道義をこそ「軍備」とせよと主張する。

・アジアの小島から精神的大国が生まれた

さらに民主主義者は進化論を持ち出す。進化の神にそむくことはいたずらな動乱を招く。

・フランス王ルイ十六世は幸福になった

王や貴族たちは能力によって、その地位にあるわけではない。遺伝の原理によって、貴族の地位を根拠付け、他方でそれが崩れる可能性にも言及する。

※ここでの民主主義者の議論は錯綜している。酔いが回ったか。

・八公熊公のために一丈以上の大気焔を吐く

「無形のいれずみ」としての爵位。しかしこの比喩は上滑りする。

世界情勢の話に戻る。

・漢学先生よ、一転語をどうぞ

国の発展は自由の制度による。自由な空気が「社会の機関」を存分に働かせる。「自然の勢い」。「進化論」を概説。政治的進化は原始的無制度の時代から君主宰相専制へと進む。後者においては「君臣の義」が機能する。ただしこれはあくまでギブアンドテイク。君主が無能の場合には国は乱れ、有能の場合には国は停滞する。君主たちはあくまで一時的な権力を握っているにすぎないにもかかわらず、それを離さない。アジアはここから抜け出なくてはならない。次に来るのが立憲制度。立憲制度において人は独立する。人間は自らのもつ権利(立法の大権)を代議士に任せる。専制君主制においては、自由な人間は限られている。

・ああ、うらやましい。ああ、気の毒な

専制君主国における卑屈な民衆生活。自由と平等の重要性。立憲制は後者については部分的にしか獲得されていない。さらに進化したものが民主制。民主制は国境も無効にする。

・自分で答えて笑って言うには、漢文のカスだ

理想国建設。極端を避け、中庸的な立憲君主制がよいとする向きもあるが、これは誤り。民主制は平和をもたらす(カント『永遠平和のために』)。人民自身が戦争を起こすことはないため。政治家よりも学者こそが有用。道義への信念があれば、防衛は必要ない。

・法律の大議論

正当防衛すら禁ずるべき。

以下、豪傑君の反論。戦争は「勢い」である。「動物の本性」が勝利を求める。また「道義心」のなかには怒りも含まれる。争うことは必ずしも不道徳ではない。また現実的にも、戦争が強い国が発展しているのである。戦争は痛みだけではなく、楽しみをもたらす。等。

・豪傑君はすこし時代おくれだ

アジアの遅れた大国に侵略を行うことで、我々は大国になることができる。もとの小国は民権主義者に残す。また小国が大国になるのは困難である。

・何らかの実際的な経済政策が~

小国が大国になるには大国を割き取らなくてはならない。外国征服は不可避。

新しく文明化する国には「新しずき」と「昔なつかし」が生れる。これは「自然の勢い」。

・聡明な才能をもち~

二つの勢力が争いあう。大臣・将軍のなかにも両派がある。

・元の自由党と改新党との面々

革新派のなかにも二つの勢力がある。

もとの自由党はきっと腹を立てるだろう~

自由党のなかには古い士族もいて、これは好戦的である。その変化は「本当の進化」ではない。

・政治的な力士の面々

昔なつかしの元素は超然としている。新しずきは慎重。前者はあとに引かぬこと、後者は失敗しないことを目的とする。

・書記官というものは世界中みなこの通り

官僚機構にも両者の違いは生れる。どちらかを取り除かなければ、国は危うい。昔なつかしを排除すべし。(ここで豪傑は自己矛盾的なことを言う。)

・政治的な外科医の出現

彼らは戦争に追いやるべし。いわば侵略軍として昔なつかしを他国に派遣し、切り離す。

洋学紳士:そうした怪物的思想が社会の発展を阻害するのだ。

豪傑:現場で力を持つのは理論ではなく技術である。

南海先生のまとめ。紳士の説は思想上の瑞雲のようなもの、豪傑君のは政治的手品。どちらも現在の役に立たない。前者は全国民の一致、後者は独断専横を要する。

紳士のいう「進化の法」は曲がりくねっており、多様である。相対主義的?唯一進化の法にさからうのは「時と場所をわきまえ」ないこと。紳士君の説もそれにあたらないか。政治の本質とは「国民の意向にしたがい、国民の知的水準にちょうど見あいつつ、平穏な楽しみを維持させ、福祉の利益を得させること」。この点でも民主制は時期尚早。

・このあたり、いささか自慢の文章です

民権にも二種類ある。下からのもの・回復の民権と上からのもの・恩賜の民権。恩賜の民権を徐々に増やしていくことで、回復の民権に等しくなるようにすべし。これは進化の理法。進化とは一方的に押し付けるものではなく、民衆の頭に醸成されるもの。

・ヴィクトル・ユーゴーの全集にも~

紳士・豪傑いずれも極端な主張を行うが、その根っこは同じ。「思いすごし」。どちらも他国の侵略を想定し、その対応策をとるが、現実はそれほど切迫したものではない。もし攻めてきたら防衛する。アジア諸国とは同盟すべき。中国についても。

・南海先生はごまかした

結論を乞う訪問者たち。南海先生:天皇をおいた立憲制度。平和友好的外交政策。中途半端な診断に不満。南海先生は奇抜さを回避したと弁明。

    • 紳士のいう「進化の理法」が相対化される

    • 結局、立憲君主制に収束する論理

 

②伊藤博文『憲法義解』

Hirobumi, Ito, Commentaries on the Constitution of the Empire of Japan, trans. by Miyoji Ito, 1889.

 

憲法義解はあくまで理解の助けであり、註疏(詳しい説明)ではない。それは後進に望む。

 

「我が国君民の分義は既に肇造の時に定まる。」「大命維新皇運隆興し、聖詔を渙発して立憲の洪猷grand policyを宣べたまひ、上元首の大権sovereign powerを統べ、下股肱の力を展べ、大臣の輔弼assistanceと議会の翼賛adviceとに依り、機関machinery各々其の所を得て、而して臣民subjectsの権利及義務を明にし、益々其の幸福を進むることを期せむとす」(21) 

 

第1章 天皇

「天皇の宝祚Sacred Throneは之を祖宗に承け、之を子孫に伝ふ。国家統治権powerの存する所なり」(22)

第1条 大日本帝国は万世一系の天皇之を統治すreigned over and governed 

天皇は不変。「統治は大位に居り、大権を統べて国土及臣民を治むるなりcombines in Himself the sovereignty of the State and the government of the country and of His subjects」「しらす」国体論。

 

第2条 皇位は皇室典範the Imperial House Lawの定むる所に依り皇男子孫之を継承す

皇室関連のことは皇室典範に記し、憲法には書かない。臣民の干渉を排除するため。

 

第3条 天皇は神聖にして侵すへからすsacred and inviolable

「君主は固より法律を敬重pay due respectせざるべからず。而して法律は君主を責問するhold Him accountable to itの力を有せず。」

 

第4条 天皇は国の元首headにして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ

「統治の大権は天皇之を祖宗に承け、之を子孫に伝ふ」

天皇の国家における位置づけは人体における首脳のようなもの。

「蓋し統治権を総攬するは主権の体essential characteristicなり。憲法の条規に依り之を行ふは主権の用carryingなり」

付記:欧州のある理論家は大権を立法権・行政権に大別する。司法権は行政権に属す。

三権は元首に「淵源original source」する。

 

第5条 天皇は帝国議会の協賛consentを以て立法権legislative powerを行ふexercise

「立法は天皇の大権に属し、而して之を行ふは必議会の協賛に依る」

付記:立法を議会の権に属すという考えは誤りである。「議会の設は以て元首を助けて其の機能を全くし、国家の意思をして精錬強健ならしむるの効用を見むとするに外ならず」

 

第6条 天皇は法律を裁可し其の公布及執行を命す

法律の裁可・公布・執行いずれも大権に属す。

付記:君主による議会法案の拒否について諸説ある。日本では法律は全て王命によるので、必然的に拒否の権もある。

 

第7条 天皇は帝国議会を召集し其の開会閉会停会及衆議院の解散を命す

第8条 天皇は公共の安全を保持し~

いわゆる緊急事態条項。「緊急命令emergency Ordinancesの権は憲法の許す所にして又憲法の尤濫用を戒むる所なり」。議会はこの特権の監視者であり、事後に検査・承諾を行う。

    壱、 この法律は法律を補うものか    答え:この勅令Imperial Ordinanceは法律に代わる力を持つ。ただし、議会の承諾を要す。

    弐、 議会の承諾の効力は       答え:勅令の効力は将来にも継続する

    参、 議会が承諾しなかった場合、政府が勅令の失効を公布すべきなのはなぜ    答え:交付によって初めて人民の義務が解かれるので

    四、 議会はどんな理由で拒めるか     答え:勅令が憲法に矛盾しているか本条項記載の要件を充たしていない時

    伍、 議会の承諾がないのに、政府がこの勅令を廃止しなかったら    答え:政府は憲法違反になる

    六、 議会が承諾を拒む時、前日にさかのぼって効力を打ち消せるか     答え:できない

    七、 議会は勅令の修正はできるか     答え:承諾するかしないかのみ

第9条 天皇は法律を執行する為に又は公共の安寧秩序を保持し~

行政命令の大権。命令は天皇の裁可のみに基づくが、法律と矛盾する場合には後者が優越する。勅令と命令の別。

付記:命令の区域については諸説あり。行政命令は積極的な国民生活への関与を含むべし。

第10条 天皇は行政各部の官制及文武の~

第11条 天皇は陸海軍を統帥すhas the supreme command 

第12条 天皇は陸海空軍の編成~

第13条 天皇は戦を宣し和を講し~

付記:天皇は外務大臣の輔翼adviceにより外交事務を行う。

第14条 天皇は戒厳a state of siegeを宣告す~

常法を停止し、軍事処分に委ねる。その要件は法律(戒厳令)で定める。

第15条 天皇は爵位勲章~

第16条 天皇は大特赦減刑~

4~16条までが大権の説明。ただし大権はここに尽くされるものではない。

第17条 摂政Regencyを置くは皇室典範の~

「天皇の名に於いてIn the name of the Emperor」は「天皇に代わってin the place of」の意。摂政を置くかは皇室内の判断。

 

第二章 臣民権利義務

かつて臣民は「大宝the great treasure」であった。臣民の権利義務の源泉は「上に在ては愛重の意を致し、待つに邦国の宝を以てし、下に在ては大君に服従し自ら視て以て幸福の臣民とすthe Emperors have made it their care to show love and affection to the people, treating them as the treasures of the county; while, on the other, the people have ever been loyal to the Sovereign, and have considered themselves as happy and blessed」

 

第18条 日本臣民たることの要件は法律の定むる所に依る

第19条 日本臣民は法律命令の定むる所の~

第20条 日本臣民は~兵役の義務を有す

第21条 日本臣民は~納税の義務を有す

付記:仏国の学者は納税を互酬的な保険料のようなものと考えているが、自分が得ることのない利益に対しても、支払わなくてはならない。「租税は国家を保持する為に設くる者」。

 

第22条 日本臣民は~移転の自由libertyを有す

「自由は秩序ある社会の下にin a community in which order prevails棲息する」 ※稿本では「天賦人権説」を否定

第23条 日本臣民は~逮捕(略)を受くることなし

第24条 日本臣民は~裁判を受くるの権を奪わるることなし

第25条 日本臣民は~住居に侵入せられ及捜索さらるることなし

第26条 日本臣民は~外信書の秘密を侵さるることなし

第27条 日本臣民は其の所有権propertyを侵さるることなし~

所有権は国家公権の下に存立する者なり。※田中正造が最初に鉱毒問題を取り上げたときの根拠のひとつは本条。

第28条 日本臣民は~信教の自由を有す

    第29条  日本臣民は~言論著作(略)の自由を有す

    第30条  日本臣民は~請願petitionを為すことを得

天皇の慈愛として。※ただし天皇に直訴すると懲役刑。

 

第31条 本章に掲げたる条規は国家事変の場合に於て天皇大権の施行を妨くることなし

第32条 本章に掲げたる条規は~軍人に準行す

「軍人は集会・結社して軍制又は政事を論ずることを得ず…」

 

第3章 帝国議会

「議会は立法に参するtakes part者にして主権を分つ者に非ず」。

また行政監視の任を負う。

    1 請願を受ける権

    2 上奏と建議の権

    3 政府に質問する権

    4 財政を監督する権

稿本「臣民の参預」

 

第33条 帝国議会は貴族院衆議院の両院を以て成立す

二院制では延滞が生じるという議論があるが誤り。二院あることで多数圧制を防げる。

第34条 貴族院は皇族(略)議院を以て組織す

政権の平衡equilibriumを保つ。

第35条 衆議院は~公選せられたる議員を以て組織す

全衆民を代表する。

第36条 何人も同時に両議院の議員たることを得す

第37条 凡て法律は帝国議会の協賛を経るを要す

第38条 両議院は政府の提出する法案を議決し~

第39条 両議院の一に於て否決したる法律案は~

第40条 両議院は法律又は其の他の事件に付~意見representationsを政府に建議することを得~

議会は既存の法律の不備を指摘し、政府に法案提出を促すことが出来る。

第41条 帝国議会は毎年之を召集す

第70条は例外

第42条 帝国議会は三箇月を以て会期とす~

第43条 臨時緊急の必要ある場合に於て常会の外臨時会を召集すへし

    第44条 帝国議会の閉会開会会期の延長及停会は両院同時に之を行ふへし~

第45条 衆議院解散を命せられたるときは~

議会の永続性の保証

第46条 両議院は各々其の総議員三分の一以上出席~

第47条 両議院の議事は過半数を以て決す

第48条 両議院の会議は公開す~

例外規定あり

第49条 両議院は各々天皇に上奏するrespectively present addressesことを得

第50条 両議院は臣民より呈出する請願書を受くることを得

第51条 両議院は此の憲法及議院法に掲くるものの外~

第52条 両議院の議員は議院に於て発言したる意見~

議員の発言の自由

第53条 両議院の議員は~会期中~逮捕せらるることなし

第54条 国務大臣及政府委員は~発言することを得

稿本では議会が大臣参会を要求する権利を否定

 

第四章 国務大臣及枢密顧問

国務大臣は輔弼giving adviceを行う。枢密顧問は枢密の謀議を行う。

 

第55条 国務各大臣は天皇を輔弼し其の責に任す~

大臣の責任については諸説あり。わが国では

    1 大臣は輔弼の任あり

    2 君主に対して直接責任を負い、人民に対して間接責任を負う

    3 大臣を裁くのは人民ではない

    4 大臣の責は政務上のものである

各大臣は連帯責任を持たない。一人づつが天皇によって選任されている。

第56条 枢密顧問は~国務を審議す

 

第五章 司法

司法権は臣民権利の侵害を回復し、刑罰を判断する。

 

第57条 司法権は天皇の名に於て法律に依り裁判所之を行ふ~

司法と行政の区別。

「行政は法律を執行し又は公共の安寧秩序を保持し人民の幸福を推進する為に便宜の経理及処分を為す」「司法は権利の侵害に対し法律の基準に依り之を判断する」

三権分立はここでも誤り。司法は行政の一部。

 

第58条 裁判官は法律に定めたる~任す

第59条 裁判の対審判決は之を公開す~

第60条 特別委裁判所の管轄に属すべきものは~

軍法会議の類。ただし行政による司法の侵害は認めない。

第61条 行政官庁の違法処分に~

行政裁判は行政処分に対する裁判。これは必ずしも司法裁判所が受理しなくともよい。行政官は司法に対して独立しているので、固有の裁判所を持つことが出来る。

 

第6章 会計

第62条 新に租税を課し~

第63条 現行の租税は~

現行の税法は改正がない限り、維持される。

付記:欧州の中には毎年徴税の全部を議会の審議にかける国がある。これはひとつには国民の「承諾なければ租税なし」という考えに基づく。もう一つは主権在民の理念から、国民は税に対して自由承諾の権を持つという考えに基づく。これらは架空の理論である。国家の存立に必要な経費は国権に依る。

 

第64条 国家の歳出歳入は~

議会は予算を協賛する。

第65条 予算は前に衆議院に提出すべし

第66条 皇室経費は~帝国議会の協賛を要せず

第67条 ~歳出は政府の同意なくして帝国議会之を廃除し又は削減することを得ず

幾つかの該当項目は帝国議会は関与できない。これも国家の存立に関わるため。

第68条 ~政府は予め年限を定め継続費として帝国議会の協賛を求むることを得

第69条 ~予備費を設くべし

第70条 ~政府は~勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得

第8条同様、慎重な処理が必要。

第71条 帝国議会に於て予算を議定せず~政府は前年度の予算を施行すべし

第72条 国家の歳出歳入の決算は会計検査院之を検査確定し~

 

第7章 補則

第73条 将来憲法の条項を改正するの必要あるときは勅命を以て議案を帝国議会の議に付すべし ※憲法改正の主体は天皇

三分の二以上の出席、かつ出席議員の三分の二以上の賛成が必要。

第74条 皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せず

第75条 憲法及皇室典範は摂政を置くの間~変更することを得ず

第76条 ~憲法に矛盾せざる現行の法令は総て遵由の効力を有す~

憲法施行以前の法令の類は(基本的に)有効である。

 

皇室典範義解

「皇室典範の成るは実に祖宗の遺意を明徴にして子孫の為に永遠の銘典を貽す所以なり」

「皇室典範は皇室自ら其の家法を條定する者なり」

 

第1章 皇位継承

第1条 大日本国皇位は~男系の男子之を継承す

第2条~第8条 省略 皇位継承順を扱う

第9条 皇嗣精神若は身体の不治の重患あり又は~継承の順序を換ふることを得

 

第2章 践祚即位ascension and coronation 

第10条 天皇崩御するときは~神器を承く

譲位の慣例を改める意図。

第11条 即位の礼~は京都に於て之を行ふ

第12条 践祚の後元号を建て~改めざること明治元年の定制に従う

 

第3章 成年立后立太子

第13条 天皇及~満十八年を以て成年とす

第14条 前条の外の皇族は満二十年を以て成年とす

第15条 儲嗣たる皇子を皇太子とす~

第16条 皇后皇太子~を立つるときは~

 

第4章 敬称  省略

 

第5章 摂政

第19条 天皇未だ成年に達せざるときは摂政を置く~

摂政の権限は厳密に制限されるべし

第20条 摂政は成年に達したる皇太子~に任す

第21条 皇太子皇太孫在らざるか~左の順序に依り折衝に任ず

第22条 皇族男子の摂政に任ずるは~

第23条 皇族女子の摂政に任ずるは~

第24条 最近親の皇族未だ成年に達せざるか~

然るべき人物が成年に達し、天皇の位を継げるようになれば、摂政はその任を外れる。但し。。。

第25条 摂政又は摂政たるべきもの~順序を入れ換ふることを得

 

第6章 太傅 たいふ Imperial Governor 

第26条 天皇未だ成年に達せざるときは太傅を置き保育を掌らしむ

第27条~第29条 省略

 

第7章 皇族

第30条 皇族と称するは~

「皇族とは皇胤の男子及其の正配及皇胤の女子」

第31条~第44条 省略

 

第8章 世傅御料 Imperial Hereditary Estate

第45条 土地物件の世傅御料と定めたるものは分割譲与することを得ず

世傅御料:皇室の財産

第46条 世傅御料に編入する土地物件は~

世傅御料は普通民法の外であるが故に、慎重に取り扱うべし

 

第9章 皇室経費

第47条 皇室諸般の経費は常額を定め~

天皇は臣民を統治しているので、臣民はその経費を払うべし。議会は検査できない。

第48条 皇室経費の予算決算検査~は皇室会計法の定むる所に依る

 

第10章 皇族訴訟及懲戒

第49条 皇族相互の民事の訴訟は~

皇族間の訴訟は内廷の裁判による。

第50条 人民より皇族に対する民事の訴訟は東京控訴院に於て之を裁判す~

皇族の特権

第51条 皇族は勅許を得るに非されは拘引し又は~得す

現行犯でも拘引できない

第52条 皇族其の品位を辱むるの所行あり~

皇族特権の停止もありうる

第53条 皇族蕩産の所行あるときは~

治産の禁

第54条 前二条は皇族会議に諮詢したる後之を勅裁す

諮詢:対等以下の機関の意見を求めること

 

第11章 皇族会議

    第55条 皇族会議は成年以上の皇族男子を以て之を組織し~

第56条 天皇は皇族会議に親臨し~

 

第12章 補則  省略